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経営とIT、4割が別物扱いの危険

IT戦略

経営とIT、分断の実態が明らかに

サイボウズが発表した「経営戦略に対するIT戦略の位置づけに関する調査」で、衝撃的な数字が明らかになりました。約4割の企業が経営戦略とIT戦略を「個別に位置づけている」と回答したのです。

つまり、10社中4社は経営の方向性とIT投資がバラバラに動いている可能性があります。この数字は、長年指摘されてきた「経営とITの乖離」を裏付けるものと言えるでしょう。

なぜこのような状況が生まれるのでしょうか。そして、この分断が企業にもたらすリスクとは何でしょうか。

IT戦略が「目的」を失う構造

経営戦略とIT戦略を個別に位置づけるということは、IT投資の目的が経営目標と整合していない可能性が高いことを意味します。

例えば、経営戦略が「新規顧客の開拓」を掲げているのに、IT戦略が「既存システムの安定運用」だけを目的としているケース。あるいは、経営が「コスト削減」を最優先する一方で、IT部門が「最新技術の導入」を追求しているケース。

このような状況では、IT投資の成果を経営目標で測ることができません。結果として、「IT投資にROIが出ない」という悪循環に陥ります。

目的関数の分裂が生む混乱

私がこれまで見てきた企業の多くで、ITの目的が部門ごとに異なる「目的関数の分裂」が起きていました。

営業部門は「売上向上のためのツール」を求め、経理部門は「正確なデータ管理」を求め、情シス部門は「セキュリティと安定性」を求める。それぞれの要望はもっともですが、全体として統一された方向性がないため、導入したツールが連携せず、かえって業務効率が低下するケースが少なくありません。

この問題の根本原因は、経営がITの目的を定義しなかったことにあります。経営戦略とIT戦略を個別に位置づけるということは、ITの目的を現場任せにしているのと同じです。

採用DXに学ぶ「目的起点」のIT実装

同じニュースで紹介されている「デジタル化・DX推進展」では、採用DXをテーマにした「らくるーと」が出展しています。採用DXは、経営戦略とIT戦略を統合する好例と言えるでしょう。

採用活動は、経営戦略の根幹である「人材確保」に直結します。優秀な人材を効率的に採用することは、企業の成長に不可欠です。採用DXを導入する企業は、「どのような人材を、どのようなプロセスで、どのくらいのコストで採用するか」という経営目標を明確にした上で、ツールを選定しています。

例えば、ある企業では「応募者数よりも、入社後の定着率を重視する」という経営判断のもと、適性検査ツールや面接評価システムを導入しました。この場合、IT投資の成果は「定着率の向上」で測定されます。経営目標とIT投資の目的が一致しているからこそ、効果を検証できるのです。

経営者がITを「定義」する方法

経営戦略とIT戦略を統合するためには、経営者がITを「意思決定装置」および「再現性の設計手段」として再定義する必要があります。

3つのIT分類で考える

具体的には、IT投資を以下の3つに分類し、それぞれの目的と評価基準を明確にします。

事業IT:成長・売上に直結するIT。速度重視。例:マーケティングオートメーション、CRM。評価基準:売上増加率、リード獲得数。

経営IT:意思決定・再現性のためのIT。統合重視。例:BIツール、経営ダッシュボード。評価基準:意思決定の迅速性、データの正確性。

管理IT:安定運用・コスト管理のIT。安定重視。例:会計システム、給与計算システム。評価基準:ダウンタイム、運用コスト。

この分類に基づいて、各IT投資の目的を経営戦略と紐づけることが重要です。例えば、「事業IT」の投資は経営戦略の「売上目標」と直接リンクさせ、「管理IT」の投資は「コスト削減目標」とリンクさせる。これにより、IT投資の効果を経営指標で測定できるようになります。

調査結果が示す「約4割」の深い意味

サイボウズの調査で「約4割」という数字が出たことは、決して楽観視できるものではありません。むしろ、この数字は「IT投資の失敗リスク」を抱える企業の割合を示していると考えるべきです。

経営戦略とIT戦略が個別に動いている企業は、以下のようなリスクに直面します。

投資の重複:同じような機能を持つツールを複数導入するムダが発生する。

データのサイロ化:部門ごとに異なるシステムを使うことで、データが統合できず、全体最適な意思決定ができない。

属人化の進行:特定の担当者しか使えないシステムが増え、担当者が退職すると運用が停止する。

変化への対応遅れ:経営環境の変化に合わせてITを迅速に変更できない。

これらのリスクを回避するためには、経営者がIT戦略を「経営戦略の一部」として捉え直す必要があります。IT部門やベンダーに任せるのではなく、経営自らがITの目的を定義する。これが、IT投資を成功に導く唯一の道です。

まとめ:経営戦略とIT戦略の統合が不可欠

サイボウズの調査結果は、日本企業の多くが経営とITの分断という構造的な問題を抱えていることを示しています。この問題を解決するためには、経営者がITを「経営資源」として定義し、経営戦略とIT戦略を統合する必要があります。

具体的なアクションとしては、以下の3つを提案します。

IT投資の目的を経営目標と紐づける:すべてのIT投資に「何のために」「どのような成果を期待するか」を明確にする。

3つのIT分類を導入する:事業IT、経営IT、管理ITに分類し、それぞれの評価基準を設定する。

定期的にIT投資の効果を検証する:経営会議でIT投資の成果を報告し、必要に応じて軌道修正する。

ITは「専門家に任せる技術領域」ではありません。経営が直接定義し、設計すべき経営資源です。この認識を持たない限り、IT投資の失敗は繰り返されるでしょう。

経営戦略とIT戦略を統合すること。それが、これからの時代に求められる経営者の責務です。

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