SaaS導入が「導入倒れ」に終わる理由
「SaaSを入れたのに、誰も使わなかった」「導入したけど、むしろ業務が増えた」。こんな話を聞いたことはないでしょうか。
SaaS導入の成功率は決して高くありません。調査によれば、導入したSaaSの約3割が1年以内に使われなくなるというデータもあります。経営者としては、無駄なコストをかけたくないところでしょう。
なぜ、こんなに多くのSaaSが「導入倒れ」に終わるのでしょうか。原因はシンプルです。「何のために導入するのか」が定義されていないからです。
多くの企業では、SaaS導入の検討が現場の「こんなツールがあるらしい」から始まります。あるいは、競合が使っているから導入する。これでは目的が曖昧です。
本記事では、SaaS導入を成功に導くための「見極め方」を、経営視点で解説します。ツール選びに迷っている経営者や情シス担当者は、ぜひ参考にしてください。
SaaS導入前に確認すべき「3つの目的」
SaaS導入の成否は、導入前の「目的定義」で決まります。この目的を、当メディアでは3つに分類しています。
事業ITとしてのSaaS:成長を加速する
事業ITとは、売上や成長に直結するIT投資です。例えば、マーケティングオートメーション(MA)ツールやCRM(顧客管理システム)が該当します。
これらのツールは、営業活動の効率化や顧客データの一元管理を目的とします。導入の判断基準は「売上に貢献するか」です。
具体例として、HubSpotやSalesforceが代表的です。これらは導入効果が可視化しやすいため、投資判断もしやすいでしょう。
経営ITとしてのSaaS:意思決定を支える
経営ITは、経営判断の質を高めるためのITです。経営ダッシュボードやBI(ビジネスインテリジェンス)ツールが該当します。
例えば、TableauやLooker Studioなどのツールは、データを可視化し、経営者が素早く意思決定するのを支援します。導入の目的は「データに基づく経営」です。
しかし、ここで注意すべき点があります。経営ITの導入は、データが整っていなければ効果を発揮しません。まずは基幹システムのデータを整備することが前提です。
管理ITとしてのSaaS:安定運用を確保する
管理ITは、業務の安定運用やコスト管理を目的とします。勤怠管理システムや経費精算システム、IT資産管理ツールなどが該当します。
例えば、freeeやマネーフォワードは経理業務の効率化に役立ちます。また、AssetViewやJAMFは、PCやソフトウェアのライセンス管理に有効です。
これらのツールは、コスト削減や業務の標準化に直結するため、ROI(投資対効果)が算出しやすいのも特徴です。
SaaS選定で失敗しないための「3つの判断軸」
目的が明確になったら、次はツール選定です。ここで重要なのは「判断軸」を持つことです。以下の3つの軸で評価しましょう。
目的関数が一致しているか
最初に確認すべきは、ツールの目的と自社の目的が一致しているかどうかです。
例えば、営業の効率化を目的にCRMを導入する場合、ツールの機能が「営業活動の記録」に特化しているかを見極めます。多機能すぎるツールは、かえって運用が複雑になる恐れがあります。
逆に、経営ダッシュボードとして使いたいのに、営業支援に特化したツールを選ぶと、データの統合が難しくなります。目的に合ったツールを選びましょう。
スケーラビリティとカスタマイズ性
次に、ツールが自社の成長に対応できるかどうかです。
中小企業の場合、当初は小規模な導入で十分でも、数年後には利用者数が増えることがあります。その際に、ユーザー数に応じて料金が跳ね上がるツールは避けたほうが無難です。
また、カスタマイズの自由度も重要です。ノーコードで設定変更できるツールは、情シスに負担をかけずに運用できます。例えば、kintoneやNotionは、カスタマイズ性が高く、中小企業にも人気です。
導入後のサポート体制
最後に、導入後のサポート体制を確認します。
SaaSは導入して終わりではありません。運用中に問題が発生した場合、迅速にサポートを受けられるかどうかが、定着率を左右します。
日本語サポートがあるか、チャットサポートが24時間対応か、導入支援サービスがあるか。これらは事前に確認しておくべきポイントです。
導入後に「使われない」を防ぐ3つのポイント
SaaS導入の失敗の多くは、導入後の運用にあります。せっかく選んだツールも、使われなければ意味がありません。
現場の「使いやすさ」を最優先する
現場が使わなければ、どんなに優れたツールも無駄になります。導入前に、実際に使うメンバーにデモを見せ、フィードバックを求めましょう。
「使いにくい」という声が多ければ、別のツールを検討すべきです。現場の抵抗感を無視して導入すると、使われないまま放置されるリスクが高まります。
導入直後の「伴走支援」を設計する
導入後、最初の1ヶ月が勝負です。この期間に、社内で使い方をレクチャーする「伴走支援」を設計しましょう。
具体的には、導入初日に全員で操作を試す「ハンズオン研修」を実施するのが効果的です。また、週1回の進捗確認ミーティングを設け、疑問点を解消します。
この期間を乗り越えれば、ツールは定着しやすくなります。
「使わないリスク」を可視化する
最後に、ツールを使わない場合のリスクを可視化しましょう。
例えば、CRMを使わない場合、「顧客情報が属人化し、担当者が退職すると取引が途絶える」といったリスクを共有します。これにより、現場の危機感が高まり、ツールを使う動機付けになります。
まとめ:SaaS導入は「目的定義」が9割
SaaS導入を成功させる鍵は、技術面ではなく「経営の目的定義」にあります。
何のために導入するのか。それが事業成長なのか、経営判断の質を高めることなのか、それとも業務の安定化なのか。これを明確にしないままツールを選んでも、失敗する確率が高まります。
本記事で紹介した3つの目的と判断軸を参考に、自社に最適なSaaSを選んでください。そして、導入後も現場が使えるように、伴走支援を設計しましょう。
ITは経営資源です。経営者が目的を定義し、現場とともに運用することで、初めてその効果を発揮します。ぜひ、今日から実践してみてください。

