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情シスはなぜ総務から生まれたのか
日本企業において、情報システム部門が総務・管理部門を起点として設置されてきた事例は少なくありません。本稿では、情シスが総務から生まれた理由を「当時の経営判断」と「ITの定義」に立ち返って整理します。
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第1章
IT導入の本来の目的
日本企業でIT(当時は電算・情報処理)が導入された主な目的は、管理業務の効率化でした。会計処理、人事・給与計算、在庫管理・購買管理、各種帳票作成・集計など、いずれも事業を直接伸ばすための活動ではなく、既存業務を正確かつ安定的に回すための管理機能でした。
当時の経営にとって、ITは「競争優位を生む戦略資産」ではなく、人手で行っていた事務処理を、より安く・早く・ミスなく行うための道具として位置づけられていました。この時点で、ITはすでに「攻め」ではなく「管理・裏方」の文脈に置かれていたのです。
会計処理
正確な財務管理
人事・給与
効率的な計算
在庫管理
安定的な運用
第2章
なぜ総務に配置されたのか
ITが担う役割が管理業務の効率化である以上、その管轄先は自ずと限定されました。経理・人事・総務と密接に関わり、全社共通のルール・手続きを扱い、現場部門を横断して調整が必要という条件を満たしていたのが、総務・管理部門だったのです。
01
管理業務との連携
経理・人事・総務と密接に関わる業務を担当
02
全社横断的な調整
現場部門を横断して調整が必要な役割
03
共通ルールの管理
全社共通の手続きとルールを扱う機能
「社内管理業務を横断的に支えるIT」を総務配下に置く判断は、当時の経営判断としては極めて自然で合理的だったと言えます。
第3章
問題は「その後」に起きた
1
初期段階
管理業務の効率化ツールとして導入
2
拡大期
生産管理、販売管理、顧客データへ浸透
3
現在
事業活動の中核領域を支える存在に
ITはやがて、生産管理、販売管理、顧客データ、業務プロセス全体といった、事業活動の中核領域へと浸透していきました。しかし、多くの企業において経営はITの位置づけを再定義しませんでした。組織上は総務配下のまま、期待役割は「安定稼働」「障害ゼロ」、評価指標はコスト削減と運用効率に留まり、事業設計や投資判断には関与しない状態が続いたのです。
第4章
固定化された役割
結果として、情シスは次のような役割に固定化されていきました。事業の前提条件を支えるが、事業を設計する主体ではない存在です。これは能力や姿勢の問題ではなく、経営が与えた役割定義の帰結なのです。
安定稼働重視
障害ゼロを最優先目標に
コスト削減
運用効率の改善が評価軸
受動的立場
事業設計への関与なし
第5章
因果関係の逆転
経営がITを管理の道具と定義
管理部門(総務)に配置
定義を更新しなかった
守りの役割に閉じ込められた
情シスについて語られる際、しばしば「日本の情シスは総務起源だから、守りのITになった」という説明がなされます。しかし因果関係は逆です。総務起源は原因ではなく結果であり、根本原因は一貫して「経営によるIT定義」にあるのです。
第6章
本質的な問いかけ
「情シスはなぜ総務から生まれたのか」という問いは、情シスの過去を説明するためのものではありません。本質的には、次の問いを突きつけています。
経営はITを何として扱ってきたのか
過去から現在までのIT定義を振り返る
その定義は、いつ更新されるべきだったのか
変化のタイミングを見極める
今なお、その定義は有効なのか
現在の事業環境における妥当性を問う
第7章
DX改革が失敗する理由
定義の未回収
組織論への逃避
人材論への矮小化
DXや情シス改革がうまくいかない企業の多くは、組織や人の問題に手を付ける前に、この定義を回収していません。表面的な組織変更や人材配置の見直しだけでは、根本的な問題は解決しないのです。
経営がITをどう定義し直すかという意思決定なくして、真の変革は実現できません。
結論
真の問題とは何か
総務起源は問題ではない
当時の判断は合理的だった
問題は定義の未更新
ITの役割変質に対応しなかった
経営の意思決定が鍵
組織論・人材論ではない
情シスが総務から生まれたこと自体が問題なのではありません。問題なのは、ITの役割が変質したにもかかわらず、経営がその意味を再定義しなかったことです。情シスをどう位置づけ直すかという議論は、組織論でも人材論でもなく、経営がITをどう定義し直すかという意思決定の問題として扱われるべきなのです。
これからの情シスへ
この問いに向き合わない限り、情シスの役割は名前や配置を変えても本質的には変わりません。経営がITをどう定義するか、その意思決定こそが、情シスの未来を決定します。
今こそ、ITの位置づけを根本から見直し、事業を設計する主体としての役割を与える時です。それは組織図の変更ではなく、経営の意識改革から始まるのです。
経営がITをどう定義し直すか。その意思決定なくして、真の変革は実現しない。