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CIOはなぜ機能しなかったのか
日本企業において、情シスの限界やIT分断が語られると、しばしば「CIOを置けばよい」「権限あるITトップを立てれば変わる」という解決策が提示されてきました。実際、多くの企業でCIOが設置されてきましたが、現実には期待された役割を果たせていません。
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問題提起
CIOがいても変わらない現実
ITは変わらない
CIOを設置しても、組織のIT体制や意思決定プロセスに変化が見られない
調整役に終わる
本来の戦略的役割ではなく、部門間の調整業務に時間を費やす
個人に負荷集中
構造的な問題が個人の責任として押し付けられる
本稿では、なぜCIOは構想された役割を果たせなかったのかを、個人の資質や力量ではなく、役割設計と経営構造の観点から整理します。
構造的問題
CIOは「何でも屋」として設計された
多くの企業でCIOに期待された役割は、単一の役割としては成立しない期待でした。CIOは経営の一部であり、同時に情シスの延長でもあり、さらに変革の旗振り役という、矛盾した役割を同時に背負わされたのです。
1
IT戦略の策定
全社的なIT戦略を立案し、経営方針と整合させる
2
基幹システムの安定運用
既存システムの保守・運用を確実に実行する
3
セキュリティ統制
情報セキュリティ体制を構築し、リスクを管理する
4
ベンダーコントロール
外部ベンダーとの関係を管理し、コストを最適化する
5
DX推進
デジタル変革を主導し、新しい価値を創造する
6
事業部門との調整
各部門の要望を調整し、全体最適を図る
権限の問題
CIOに「決める権限」が渡されなかった
形式上CIOが置かれていても、実態は投資判断は経営会議が握り、事業優先順位は事業部が決め、人事評価や組織設計は別ラインという状況が多く見られます。
この状態でCIOにできるのは、調整し、説明し、落としどころを探すことだけです。権限なきCIOは、構造上「機能しない」のです。これは個人の問題ではありません。
0%
実質的な決定権
多くのCIOが持つ実際の意思決定権限
期待と現実のギャップ
CIOに期待されたのは「統合」ではなく「後処理」
本来の期待
事業・組織・ITを横断した統合設計、捨てる判断、全体最適の確定
実際の役割
部門ごとに決まったITをどうにかつなぎ、大きな問題を起こさずに回す
統合を任せたのではなく、統合できなかった結果を押し付けたという方が実態に近い
CIOは「経営の代行」を求められていた
ITの目的定義、投資の是非、優先順位の決定は本来、経営の仕事です。しかし多くの企業では、その判断をCIOに肩代わりさせようとしました。
経営ではないが
CIOは経営メンバーとしての正式な地位や権限を持たない
経営と同等の判断を求められる
しかし経営レベルの意思決定を期待される不成立な立場
国際比較
海外のCIOと決定的に違う点
海外企業のCIOが機能しているように見えるのは、肩書きが同じでも役割の前提条件がまったく違うからです。日本企業がCIOを導入しても機能しなかったのは、権限、責任、判断範囲を変えないまま、肩書きだけを輸入したからです。
1
経営メンバー
CIOが経営チームの正式なメンバーとして位置づけられている
2
統合された設計
事業設計とIT設計が分離されておらず、一体的に進められる
3
明確な権限委譲
判断権限が明確に委譲され、実行責任を持つ
核心
CIOが機能しなかった本当の理由
経営が担うべきITの意思決定を、CIOに押し付けたから
代替装置ではない
CIOは経営判断の代替装置ではありません
魔法の存在ではない
分断された構造を魔法のように統合する存在でもありません
CIOが機能するかどうかは、経営が何を引き取り、何を委ねるかが先に定義されているかどうかで決まります。
本質的な問いとは
「CIOはなぜ機能しなかったのか」という問いは、CIOという役職が不要だったのかを問うものではありません。
本質的な問い
経営は、ITに関するどの判断を自ら担う覚悟があったのか
この問いに答えない限り、CIOを置いても、CDOを置いても、新しい役職を増やしても結果は変わりません。
1
CIO導入
形だけの役職設置
2
CDO追加
さらなる役職の追加
3
結果は同じ
構造が変わらない限り機能しない
結論
CIOが機能する唯一の条件
1
2
3
4
1
経営の覚悟
2
ITを経営判断の中核に
3
明確な権限委譲
4
統合された設計思想
CIOが機能する条件は一つしかありません。経営自身が、ITを経営判断の中核に置くことです。それがないCIOは、構造的に機能しません。
役職を増やすのではなく、経営がITに対する責任を明確に引き受けることが、真の変革への第一歩となります。