IT刷新をどこから始めるべきか
IT刷新を検討する局面で、経営者が最初に直面する問いは決まっています。どのシステムから手を付けるべきか。老朽化した基幹からか、それともSaaSの整理からか。多くの企業は「壊れているところ」から直そうとしますが、この判断こそが、IT刷新を長期化・複雑化させてきた最大の原因です。
第1章
IT刷新は「システムの問題」ではない
まず明確にしておくべき前提があります。IT刷新は、壊れたシステムを直す作業ではありません。
本質は、判断が揃わない、全体が見えない、捨てられないという状態を生んでいる経営構造の刷新です。そのため、個別システムや古い技術から着手しても、構造は何も変わりません。
第2章
最初に手を付けるべきは「判断の整理」
IT刷新で経営が最初に行うべきことは、極めてシンプルです。どの判断を、今後も経営として引き取りたいのかを明確にすることです。
全社で揃えるべき判断は何か
組織全体で統一すべき意思決定の範囲を定義します
事業ごとに任せる判断は何か
各事業部門に委譲する判断の領域を明確化します
将来、誰に任せたい判断は何か
長期的な権限移譲の方向性を設計します
これを決めない限り、何を刷新しても、どこを変えても必ず部分最適に戻ります。
第3章
「全体設計」から始めない刷新は失敗する
多くの企業が、小さく始める、影響の少ないところからという方針を取ります。しかしIT刷新において、全体設計を後回しにした「小さな改善」は、必ず足を引っ張ります。
データ定義が合わない
権限設計が揃わない
統合時にやり直しになる
理由は明確です。後戻りできない判断を、後回しにしているからです。
第4章
最初に決めるべき3つの設計事項
IT刷新を始める前に、経営が必ず決めるべきことは次の3点です。
判断の共通化レベル
  • どの判断を全社で揃えるのか
  • どこまでを事業に委ねるのか
データの意味定義
  • 売上とは何か
  • 顧客とは誰か
  • 正しい数字とは何か
捨てる前提
  • 残すIT
  • 捨てるIT
  • 期間限定で使うIT

この3点が定まらない限り、刷新は「延命」にしかなりません
第5章
技術刷新は「結果」として行う
ここまで決まって初めて、基幹刷新、SaaS整理、内製化といった具体的施策が意味を持ちます。
技術刷新は、経営判断の再設計の結果として行うものであり、出発点ではありません。
01
経営判断の再設計
判断構造を明確化する
02
全体設計の確定
データと権限を定義する
03
技術施策の実行
システム刷新を実施する
第6章
経営が最初に引き取る覚悟
IT刷新を成功させる企業に共通する点は一つしかありません。
最初に経営が一番重い判断を引き取っていることです。
1
全体設計
経営が構造を決める
2
捨てる決断
不要なものを明確にする
3
優先順位
実行順序を定める
これを現場やIT部門に委ねた瞬間、IT刷新は「終わらないプロジェクト」になります。
成功への道筋
IT刷新の成功は、正しい順序で判断を積み重ねることで実現します。
判断の整理
経営として引き取る判断を明確化
全体設計の確定
データ定義と権限設計を決定
捨てる前提の設定
残すもの・捨てるものを選別
技術施策の実行
設計に基づいてシステムを刷新
IT刷新の本質
判断
何を決めるべきかを明確にする
意味
データと概念の定義を統一する
構造
全体の設計を先に確定する
IT刷新をどこから始めるべきか。答えは、システムからではありません。判断、意味、構造。ここから始めます。
経営が自らの判断構造を作り直す
経営がこの順序を引き取ったとき、IT刷新は初めて前に進み、部分最適は止まり、再現可能な経営が戻ってきます。
IT刷新とは、経営が自らの判断構造を作り直す行為に他なりません。
前に進むIT刷新
明確な方向性と実行力
部分最適の終焉
全体最適への転換
再現可能な経営
持続可能な成長基盤