ツール選定を経営判断に戻す
多くの企業で、ITツールの選定は現場主導で行われています。しかし、この構造こそがツール乱立と部分最適を生み続けてきた原因です。本稿では、なぜツール選定を経営判断として引き取るべきかを整理します。
第1章
現状の意思決定構造
01
現場がツールを選ぶ
業務の現場が使いやすさや機能性を基準にツールを選定します。
02
情シスが可否を判断する
セキュリティや技術的な観点から導入の可否を評価します。
03
経営は最終承認のみ
経営層は予算承認など形式的な最終判断のみを行います。
一見すると合理的な分担に見えますが、この構造がツール乱立、部分最適、統合不能を生み続けてきました。
第2章
ツール選定は「構造設計」である
従来の捉え方
  • どれが便利か
  • どれが安いか
  • どれが使いやすいか
単なる道具の購買として扱われてきました。
本質的な意味
ツールとは、業務と判断を固定する構造物です。
  • 何を入力させるか
  • どの情報が正とされるか
  • どこまでを自動化するか

これらはすべて、経営判断の前提条件を作っています。
第3章
現場任せが合理的に見える理由
現場が一番困っている
日々の業務課題を最も深く理解しているのは現場です。
業務を一番理解している
実務の詳細や要件を把握しているのも現場です。
スピードが出る
現場判断により、迅速な導入が可能になります。
短期的には、この判断は正しい。しかし、局所最適として正しい判断が、全体として正しいとは限らないのです。
第4章
経営不在がもたらした結果
経営がツール選定から距離を置いた結果、次のような問題が発生しました。これは現場や情シスの判断ミスではなく、経営が統合の判断を引き取らなかった結果です。
ツールの乱立
同じ目的のツールが複数存在し、コストと管理負担が増大しています。
データの不整合
データの意味が部門ごとに異なり、全社的な分析が困難になっています。
技術的負債の蓄積
解約できないツールが積み上がり、身動きが取れなくなっています。
第5章
経営が引き取るべき判断
経営が決めるべきではないこと
どのツールを選ぶか
経営が引き取るべき判断
  • どの業務判断を共通化するか
  • どのデータ定義を全社で揃えるか
  • どこまでを統合し、どこを分けるか

これが決まって初めて、ツール選定は「手段の選択」になります。
第6章
正しい役割分担
ツール選定を経営判断に戻すとは、経営が全部を決めることではありません。役割分担は明確です。
経営
  • 統合の方針
  • 判断基準
  • 捨てる覚悟
IT組織
  • 技術的妥当性の評価
  • セキュリティ・運用設計
現場
  • 実運用の要件定義
  • フィードバック
この順序が逆転した瞬間、ツールは増殖します。
第7章
経営が立てるべき3つの問い
経営が最初に立てるべき問いは、次の3つです。これに答えられないツールは、将来の負債になる可能性が高いと言えます。
統合の必要性
この判断は、全社で揃えるべきか
権限の所在
将来、この判断を誰に任せたいか
柔軟性の確保
このツールは、捨てられる設計になっているか
まとめ
ツール選定の本質
ツール選定を経営判断に戻すとは、現場の自由を奪うことでも、ITを中央集権化することでもありません。
それは、経営が、どの判断を構造として固定するかを決めることです。
この判断を引き取らない限り、ツールは増え続け、統合は進まず、経営は全体を見失います。
経営構造を形作る意思決定
ツールは小さな意思決定に見えます。しかしその積み重ねが、経営構造そのものを形作っています。
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4
1
経営判断
2
統合方針
3
ツール選定
4
業務構造
だからこそ、ツール選定は経営判断でなければならないのです。