経営課題
情シス改革が失敗するパターン
多くの企業で、情シス改革は繰り返し試みられてきました。組織再編、内製化推進、DX部門への改組、CIO/CDOの設置など、様々な取り組みが行われています。
しかし数年後、現場から聞こえてくる言葉は驚くほど似通っています。「結局、何も変わらなかった」「形だけの改革だった」「現場はむしろ疲弊した」という声が後を絶ちません。
本稿では、なぜ情シス改革は高確率で失敗するのかを、施策の良し悪しではなく、改革が失敗する"構造パターン"として整理します。
失敗パターン①:人を替えれば変わる、という発想
よくある施策
  • キーパーソンを外部から採用する
  • 情シス長を交代させる
  • 若手・デジタル人材を入れる

重要な真実: 役割・権限・評価が変わらないまま、人だけを替えても結果は変わりません。
新しい人材も、最終的には「決められない」「投資できない」「評価されない」という既存構造に回収されてしまいます。人材の質の問題ではなく、システムそのものの問題なのです。
失敗パターン②:組織名や配置を変えれば変革できるという誤解
1
情報システム部
従来の組織名
2
DX推進部
名称変更
3
事業部配下へ
配置転換
4
横断組織
再編成
こうした組織変更は頻繁に行われますが、意思決定の主語が変わらなければ、組織名は意味を持ちません。
権限・責任・評価軸が同じであれば、呼び名だけが変わり、期待だけが増え、摩擦が拡大する結果になります。
失敗パターン③:DXや内製化を「目的」にしてしまう
改革が失敗する企業では、次のような言葉が目的化してしまいます。
DXを進める
デジタルトランスフォーメーションという言葉だけが先行
内製化率を上げる
数値目標だけが独り歩き
アジャイルにする
手法の導入が目的化
本質的な問いが欠けている
  • 何のためのDXなのか
  • 何を内製すべきなのか
  • どの成果を出すのか
これらが定義されないまま、活動だけが増えていきます。
失敗パターン④:評価指標を変えずに、行動だけを変えさせる
多くの改革は、次の矛盾を内包しています。
評価基準
「障害ゼロ」「コスト削減」のまま変わらない
要求される行動
「攻めろ」「変われ」と矛盾した指示

合理的な選択: この条件下で、情シスが合理的に取る行動は一つしかありません。掛け声には従い、行動は変えない、という選択です。
評価が変わらない限り、行動が変わることはありません。これは人の問題ではなく、インセンティブ設計の問題なのです。
失敗パターン⑤:経営自身の役割を変えないまま改革を委ねる
最も根深い失敗パターンがこれです。経営層は自らの役割を変えないまま、情シスだけに変革を求めます。
1
経営はIT定義を更新しない
戦略レベルでの方針が不在
2
統合判断を引き取らない
重要な意思決定を委譲しない
3
改革は情シスに任せる
責任だけを現場に押し付ける
構造的な問題
経営が変わらないまま、情シスだけを変えようとする。この構造では、どんな改革も持続しません。
失敗パターン⑥:「現場の問題」にすり替わる
改革が行き詰まると、最後に持ち出される説明は決まっています。
現場が理解していない
スキルが足りない
意識が低い

警告サイン: これは構造問題を人の問題にすり替えた瞬間であり、改革が失敗したことのサインでもあります。
真の問題は個人の能力や意識ではなく、システムそのものにあります。しかし、それを認めることは経営層にとって困難なのです。
失敗の構造:全体像
これまで見てきた6つの失敗パターンは、すべて共通の構造を持っています。
人材交代
新しい人材を投入
組織変更
名称や配置を変更
目的の曖昧化
手段が目的化
評価の不一致
行動と評価の矛盾
経営の不在
責任の委譲のみ
現場への責任転嫁
失敗の原因を現場に
このサイクルが繰り返される限り、改革は成功しません。
改革を成功させるために必要なこと
情シス改革を成功させたいのであれば、最初に変えるべきものは組織図でも、人材でも、スローガンでもありません。
ITの定義を明確にする
経営がITをどう位置づけるか
判断基準を確立する
何を優先し、何を捨てるか
責任を引き取る
経営自らが意思決定する
経営がITで何を決め、何を自ら引き取るのか。この一点を明確にしない限り、改革は合理的に失敗し続けます。
結論:改革の本質
失敗する改革の特徴
  • 表面的な変更に終始
  • 経営の役割は不変
  • 責任は現場に委譲
  • 評価軸は従来のまま
成功する改革の条件
  • 経営が定義を更新
  • 判断を自ら引き取る
  • 評価軸を再設計
  • 構造そのものを変革

最も重要な真実: 情シス改革が失敗するパターンは、ほぼ決まっています。それは、経営が担うべき定義・判断・責任を引き取らないまま、改革を現場に委ねることです。
真の改革は、経営層が自らの役割を再定義し、責任を引き取ることから始まります。それなくして、持続可能な変革は実現しません。