内製と外注を分ける判断軸
ITに関する意思決定の中で、経営者が最も悩む問いの一つがこれです。内製すべきか、外注すべきか、どこまで自社で持つべきか。この問いはしばしば、人材の有無、コストの安さ、内製化のトレンドといった観点で語られます。
よくある失敗
多くの企業が陥る罠
内製の形骸化
目的が不明確なまま内製化を進め、実装だけが残る状態に陥ります。
外注のブラックボックス化
丸投げした結果、なぜそう作ったのか分からず、改善できない状態になります。
どちらもうまくいかない
判断軸が曖昧なため、内製も外注も中途半端な結果に終わります。
本稿では、内製と外注を分けるべき本当の判断軸を、人材論やコスト論から切り離し、経営が引き取るべき構造判断として整理します。
内製か外注かは「能力」の問題ではない
最初に切り捨てるべき誤解があります。内製できるかどうかは、人材がいるかどうかの問題ではありません。人材は採用すれば増えますし、外部から借りることもできます。
しかし、何を自社で持つべきかという問いは、能力論では決まりません。それは、経営が、どの判断を自社に残したいかという意思の問題です。

重要なポイント
内製・外注の判断は、技術力や人材の有無ではなく、経営の意思決定の問題です。
内製の本質
内製すべき領域とは何か
内製すべき領域には、明確な共通点があります。それは、事業の競争力や再現性に直結する判断です。
価格・条件設定
価格や条件をどう決めるかは、事業戦略の核心です。
顧客体験設計
顧客体験をどう設計するかは、競争優位性を生み出します。
業務フロー変革
業務フローをどう変えるかは、組織の再現性に直結します。
判断基準の設定
判断基準をどこに置くかは、経営思想そのものです。
外に出した瞬間、学習と改善が止まる領域。ここは、技術実装そのものよりも、判断ロジックを自社で保持できるかが本質です。
外注すべき領域とは何か
一方で、外注すべき領域も明確です。それは、再現性が高く、判断が標準化できる領域です。
汎用的な開発
標準化された技術やフレームワークを使った開発は、外部の専門性を活用できます。
明確な仕様が切れる業務
要件が明確で、判断の余地が少ない業務は外注に適しています。
運用が安定している領域
定型的な運用業務は、スピード・品質・コストの観点で外部活用が合理的です。

重要なのは、外注すること自体が問題なのではありません。問題になるのは、判断すべき領域まで外に出してしまうことです。
失敗パターン
よくある失敗パターン
内製・外注の判断を誤る企業には、共通したパターンがあります。これらはすべて、どの判断を自社に残すかを決めていないことが原因です。
内製の失敗
  • 目的が曖昧なまま内製化を掲げる
  • 実装が目的になり、判断が残らない
  • 人が抜けた瞬間に崩壊する
外注の失敗
  • 丸投げする
  • なぜそう作ったのか分からない
  • 改善できず、依存が深まる
判断軸は「作るか」ではなく「決めるか」
問いかけ
その領域の判断を、将来も自社で持ち続けたいか?
Yes → 内製
判断ロジックを保持し、学習と改善を継続します。
No → 外注
実装や運用を委ね、専門性を活用します。
ここで言う内製とは、すべてを自分たちで作ることではありません。判断を内側に残すことを意味します。
経営が引き取るべき責任
内製と外注の線引きは、情シス、CIO、CTOに委ねられるものではありません。なぜならそれは、事業戦略、競争力、経営の再現性に直結する判断だからです。
事業戦略
どの判断を残すかは、事業の方向性を決める戦略的選択です。
競争力
判断の保持は、競争優位性の源泉となります。
再現性
経営の再現性は、判断ロジックの蓄積から生まれます。

経営の責任
どの判断を社内に残すかを決める責任は、経営にしかありません。
まとめ
判断軸が明確になったとき
内製か外注か、という問いは、技術や人材の話ではありません。それは、経営が何を自分たちの中に残したいかという問いです。
01
内製化は目的化しない
判断軸が明確になれば、内製化そのものが目的になることはありません。
02
外注はブラックボックス化しない
何を残すかが明確なら、外注しても判断は自社に残ります。
03
ITは経営の武器になる
判断が経営に統合されたとき、ITは真の競争力となります。
おわりに
内製と外注の選択は、経営が自らの判断をどこに置くかを決める行為に他なりません。
この判断軸を明確にすることで、ITは単なるツールから、経営の意思を実現する武器へと変わります。
あなたの組織は、どの判断を自社に残しますか?
経営が何を自分たちの中に残したいか。この問いに答えることが、内製と外注を分ける真の判断軸です。