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経営者はITをどう考え直すべきか
本メディアでは、なぜ情シスは守りに閉じ込められたのか、なぜIT統合は進まなかったのか、なぜCIOやCTOを置いても状況は変わらなかったのかを、一貫して経営判断の不在という観点から解体してきました。
本稿では、経営者自身の思考の置き場所を根本から組み替えるための論点を提示します。IT投資の判断方法でも、ツール選定のコツでも、DX成功事例の紹介でもありません。
ITを「専門領域」から引き戻す
従来の考え方
ITは専門家に任せるもの、技術的な話は現場に委ねるものと考えてきました。
本質的な問い
何を最適化するのか、どの判断を構造に落とすのか、何を捨てるのか。
新しい定義
ITは専門領域ではなく、意思決定領域であると考え直すことが必要です。
最初に行うべきことは明確です。ITを、再び経営の主語に戻すこと。これらの問いは技術ではなく、経営判断なのです。
「ITで何をしたいか」ではなく「何を決めたいか」を問う
ITを考える際、多くの経営者は「ITで何ができるか」「どんなツールがあるか」と問います。しかし、問いの順序が逆です。
最初の問い
自分たちは、何を決める会社なのか
判断の速度
どの判断を速くしたいのか
判断の統一
どの判断を揃えたいのか
判断の委譲
どの判断は人に任せたいのか
これが定まらない限り、IT投資は場当たり的になり、DXはスローガンで終わり、統合は進みません。
ITを「結果」ではなく「構造」として見る
結果論の罠
多くのIT議論は結果論に流れます。
効率が上がった
コストが下がった
スピードが出た
これらは重要ですが、すべて副次的な結果です。
構造を見る視点
経営者が見るべきなのは、どんな判断構造が、その結果を生んでいるのかという点です。
なぜ速く判断できたのか
なぜ人に依存せずに回ったのか
ITとは、結果を生む判断構造の写像なのです。
「任せる判断」と「引き取る判断」を分ける
ITに関して、経営者が最も誤りやすいのは、すべての判断を専門家や情シスに委ねてしまうことです。しかし、すべての判断が委譲できるわけではありません。
1
目的
何を再現したいのか
2
優先順位
何を先にやり、何をやらないか
3
捨てる覚悟
どの負債を切るか
経営者が引き取るべき判断は、常にこの3点に集約されます。これを引き取らない限り、CIOも、CTOも、情シスも正しく機能しません。
ITを「経営思想の再現装置」として捉える
経営思想
スピード重視、再現性重視、安定性重視
プロセス化
判断をプロセスに落とし込む
データ構造
思想をデータ構造に埋め込む
判断基準
基準として固定する
最終的に、経営者が到達すべき視点はここにあります。ITとは、経営思想を再現するための装置です。これらは経営者の価値判断であり、本来、言語化されるべきものです。
考え直すとは「やり方」ではなく「立ち位置」を変えること
「ITをどう考え直すか」とは、新しい知識を学ぶことでも、技術トレンドを追うことでもありません。それは、ITに対する経営者自身の立ち位置を変えることです。
1
観客
ITを外から眺める立場
2
発注者
ITを依頼する立場
3
設計責任者
ITを設計する立場
この立ち位置に立った瞬間から、情シスの役割は変わり、IT投資の意味は変わり、組織の摩擦は減り始めます。
立ち位置の変化がもたらす影響
情シスの役割
守りから攻めへ、実行部隊から戦略パートナーへと変化します。
IT投資の意味
コストセンターから価値創造の源泉へと意味が変わります。
組織の摩擦
部門間の壁が低くなり、意思決定がスムーズになります。
経営者が到達すべき新しい視点
ITを経営から切り離された専門領域として扱うのをやめる
ITは、経営判断を固定し、組織の動きを揃え、企業の再現性を作るための装置です。
この前提に立ったとき、DXは手段になり、情シスは武器になり、経営は再び選べるようになります。
経営判断の固定
判断基準を明確化し、組織全体で共有します。
組織の動きを揃える
バラバラな動きを統一された方向へ導きます。
企業の再現性
成功パターンを構造化し、再現可能にします。
次章への展開
経営者がITをどう考え直すべきか。答えは一貫しています。ITを、経営から切り離された専門領域として扱うのをやめることです。
01
DXは手段になる
目的化したDXから、経営判断を実現する手段へ
02
情シスは武器になる
守りの部門から、経営を加速させる武器へ
03
経営は再び選べるようになる
制約から解放され、本来の選択肢を取り戻す
第VI章では、ここからさらに一段深く、ITを主語にしない意思決定の思考フレームへと進んでいきます。